廃棄するサイレージの量は、酪農の収益性に大きく影響します。特に飼料設計の大部分をサイレージが占めている生産者は、常に「廃棄ゼロ」を心がけて欲しいと思っています。バンカーサイロ内において、目に見える廃棄サイレージを作らないようにします。「イギリスでは平均でイネ科牧草サイレージの10%以上が、毎年廃棄されています。この数字は、世界各地の様々な原料草のサイレージにも当てはまります。」
主な問題点の1つは、廃棄品の真の代価が理解されておらず、非常に過小評価されていることです。ほとんどの生産者が、この代価を理解していない、あるいは認めようとしていません。これほど多量のサイレージが無駄にされてよい理由はありません。目に見える廃棄サイレージをゼロにすることを目指し、成功している生産者も増えています。
ゴードン氏の計算によると、廃棄サイレージの損失コストは1トンあたり13,500円です。そのため500トンのサイレージ中の10%が廃棄となった場合、1年間に68万円を失うことになります。廃棄サイレージによる損失コストは、2つの要素から計算されます。1つ目は、原料作物を栽培・収穫・調製するのにかかる物理的コストです。これが、原料草1トンにつき約4,500円であると推定されます。
2つ目は、失われた飼料価値を補うために、支払わなくてはいけないコストです。原料草の代謝エネルギー価(ME)が10.7MJ /乾物kgである場合、乾物率30%の原料草1トンが供給する代謝エネルギー量は3,210MJとなります。このエネルギー量があれば、605ℓの乳を生産することができます。同量の乳を濃厚飼料を給与して生産するためには、乳1リットルあたり濃厚飼料が0.45kg必要として、272kgの濃厚飼料が追加で必要になります。濃厚飼料の価格が33,000円/トンだとすれば、無駄になった原料草1トンを補うのに9,000円の費用が発生することになります。
これに加えて、廃棄処分をするための人件費がかかります。
「500トンのサイレージのうち10%を廃棄する場合、50トンのサイレージをバンカーやスタックサイロから取り出して廃棄します。除去作業に1日10分間要すると考えて、365日間では合計61時間にも達します。」
「廃棄サイレージは、作るも作らないも自分次第です。すぐにでも、目に見える廃棄サイレージをゼロにするようなサイレージ作りを目指しましょう。その実現のためには、良く計画を立て、細部にまで気をつけてサイレージ調製を行うことが重要です。」
飼料価値の高いサイレージを、乾物ロス無しに保存するためには、速やかで適切なサイレージ発酵が欠かせません。サイレージ調製しようとしている原料草の種類に合わせて、サイレージ調製材を選んで使いましょう。
「 バンカーやサイロへの原料草の詰め込みは丁寧に、そしてしっかりとおこないます。サイレージの山の肩部分は、特に気をつけて踏圧します。次にサイレージの山にカバーをしっかりと掛けますが、酸素バリアフィルムのシートがお勧めです。酸素を遮断したいのですから、最も効果的な方法は、酸素バリアフィルムを使うことです。シートでサイロの山全体を覆い、全体的に重石で押さえます。シートを掛け終えたら、シートを傷めないよう、その上には乗らないようにして下さい。シートが傷むと、空気の侵入を許してしまいます。」
廃棄ゼロの経済的利益を考えると、廃棄を減らす・なくすために払う代価は、優れた投資だと言えます。廃棄ゼロを目指すことは、どの生産者にとっても、大きな収益への貢献となるでしょう。」
※原文の通貨単位はポンドですが、1ポンド=150円で換算しています。
報告:ラレマンド社 グローバル テクニカルマネジャー
ゴードン マーリー