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アルファルファサイレージ

粗飼料用作物としてのアルファルファ(ルーサン)は、嗜好性が良く、蛋白質含量が高く、冬に強く、干ばつにも強い性質を持ちます。しかし栄養価が一方で、欠点も伴います。アルファルファの栽培には、肥沃でpHが高く、水はけの良い土が必要です。

アルファルファ乾草に比べてアルファルファサイレージは、葉の脱落が少ないため、一般的に栄養を多く残しています。またアルファルファサイレージは、目標とする乾物率に達するまでに必要な、圃場での予乾時間が短いことが特徴です。この特徴から、悪天候によるダメージを回避し易いと言えます。さらに特に乾燥した暑い気候の下では、水分の多い飼料の方が、牛にとっての嗜好性が良く、消化性も優れます。アルファルファサイレージは、反芻動物向けの完全混合飼料(TMR飼料)に配合するのに適しています。

成熟度

アルファルファの収穫に際して考慮すべき2大要素は、収量と品質です。圃場で成熟が進むにつれ、総収量が増える一方で質が低下します。春の成長期には、収穫が1日遅れるごとに、日に日に質が低下します。高い品質で収量も十分に確保するためには、1番草と2番草の刈り取りスケジュールを最適化しなければなりません。

アルファルファの質の低下は、葉と茎の比率の変化(茎が伸びる)によっても起こります。繊維とリグニンの量が増え、相対的に蛋白質の比率が低下します。茎が伸びることで中性デタージェント繊維(NDF)の比率が高くなり、これが消化率の低下につながります。このようなアルファルファサイレージでは、ルーメンが繊維で満たされて摂取量が低下する、さらにリグニンの蓄積量が増えて消化率が低下する、という影響があると考えられます。

 

成熟に伴う、アルファルファの乾物量と蛋白質、エネルギー価の変化

※UFL:フランス国立農業所による、泌乳のための粗飼料単位, 1 UFL= 1 700kcal

 

アルファルファの生育ステージの評価に役立つツールとして、アルファルファの品質予測等式(predictive equations for alfalfa quality 、PEAQ)スティックがあります。これは最も長い茎と最も成熟した茎から、そのアルファルファ株のNDFを推定するものです。

alfalfa with stick

乾物率

アルファルファは、刈り取り後早々に糖分を失い始めます。糖は、サイレージ発酵を行う細菌の栄養源です。高品質なアルファルファサイレージを作るためには、刈り取ったアルファルファを、各貯蔵設備毎のサイレージ調製に適した乾物(DM)レベルにまで、なるべく早く乾燥させることが重要です。

アルファルファ収穫ステージ乾物率(DM%)
バンカーまたはチューブバックつぼみ - 1/10 開花35-45%
ステイヴ(コンクリートブロックのタワーサイロ)つぼみ - 1/10 開花40-55%
ハーヴェストア(スチールのタワーサイロ)つぼみ - 1/10 開花50-70%
ラップベールつぼみ- 1/10 開花40-60%

 

収穫したアルファルファを水分が高い状態で詰め込むと、緩衝能が高いためにサイレージ発酵が長引く危険性があります。その場合、乾物ロスと乳酸以外の酸の蓄積が起こり得ます。また、クロストリジウム属細菌による酪酸発酵が起こる確率も高くなります。

一方で乾き過ぎのアルファルファの場合、詰め込み時に十分な圧密がしにくくなります。中に閉じ込められた空気によって、植物の呼吸量が増え、発熱が起こります。また好気的微生物(カビ等)の代謝活動が起こり、好気的不安定性が高まる可能性があります。その結果、動物が利用できる蛋白質が減少しかねません。サイロ投入前に、適切な乾物率にまで予乾することが重要です。

 

刈り取りの高さ

ウィスコンシン大学では、最大限の乾物量と栄養量を得るために、元気でストレスのかかっていないアルファルファを、7.5 cmの高さで刈ることを推奨しています。圃場におけるロスを減らし、予乾を素早く行うために、転草・集草機(テッダー・レーキ)を使っても良いでしょう。

切断長

乾物率が30%を超える場合は、切断長は1.5 cm以下にして下さい。この場合、空気が入らないよう気をつけて圧密・密封する必要があります。また繊維の物理的有効性が十分になるよう、飼料設計を行ってください。乾物率が30%未満の場合は、空気の進入リスクは相対的に低く、もっと長い(2~5 cm)切断長でも大丈夫です。

刈り取り

刈り落とした草を、列幅を広くして干せば、乾燥がずっと早くなり、植物中の糖があまり失われずに済みます。牧草類は通常トウモロコシに比べて糖分が少ないので、その糖分を失わないようにすることが重要です。

晴天の午前中の後、午後にアルファルファを刈り取ると、草に含まれる糖の量は多くなります。しかしこの草をあまり長時間ウィンドローにして出しておいたのでは、糖分の多くが失われてしまいます。予乾時間は、使用する貯蔵設備の種類によって変わります。乾物率の目標値については、上の表をご覧下さい。

1番草の刈り取りが最も難しく、これによって当該シーズンの以後の収穫スケジュールが決まってきます。寒冷地においては、1番草がそのシーズンの総乾物収量の30~40%を占めます。品質と収量のバランスを良くすることが、極めて重要です。収穫が遅れれば、圃場に残る多くの草の質がどんどん低下していくことになり、大きな損失になります。収穫が1日遅れるごとに、品質は相対飼料価値(RFV)又は相対飼料品質(RFQ)で5ポイント低下する、と言われています。

またアルファルファ植生の中に、出穂期を過ぎた寒冷型イネ科草が混じっていることがあります。その場合、原料草としての質は一層低下します。

詰め込み密度

乾物量の損失を抑えるためには、収穫後に速やかに嫌気的環境を作ることが必要です。そのためには、原料草の詰め込み・踏圧をきちんと行うことが大変重要です。サイレージの間隙率は、詰め込み密度と乾物量によって決まります。これによってサイロ内への空気の侵入率が決まります。原則として、アルファルファサイレージの最低目標詰め込み密度は、200~250 kg DM/m3、または間隙率40%未満とすることが推奨されています。

課題

土または灰による汚染は、アルファルファサイレージによく起こりがちな問題です。灰分が過剰に含まれる場合、サイレージ発酵が阻害され腐敗する危険性が高くなります。以下の点に気をつけ、アルファルファサイレージ中の灰分を乾物の10%未満に抑えるようにして下さい。

  • 倒伏した原料草を収穫しない。 倒伏しにくい品種を植え、原料草の倒伏を減らす。倒伏した原料草を収穫する場合は、倒れた方向の逆側から収穫する。
  • 収穫を早める。
  • 収穫機(ディスクモア)のカッターバーの高さを上げる。 刈り取りの高さを下げると収量は増えるが、原料草に混ざる灰分が増える可能性が高い。
  • 収穫機(ディスクモア)のフラットナイフを使う。 カーブナイフはより優れた集草能力を有しているが、同時に土を地表から草に混入させてしまう。
  • 予乾のために原料草をまとめたウィンドロウを、直接地面に触れさせない。 草が地面に直接触れないよう、刈り取り跡の上に乗せる。
  • 集草機(レーキ)の爪(タイン)を地面に触れさせない。
  • 草を水平方向にはなるべく動かさない。 3つの集草列をまとめる時は、3つともを動かして一ヶ所にまとめるのではなく、左右の列を中央の列の上に重ねるようにする。
  • 集草とウインドロウ作りを行う機械(ウィンドロウマージャー)を使う。 マージャーを使うことによって、草を地面の上で転がさずにそのまま水平に移動させることができる。
  • サイレージは、コンクリートまたはアスファルトの土台上で貯蔵する。 開封後の取り出し時に、土の付着を最小限に抑えられる。

アルファルファサイレージは、トウモロコシサイレージに比べて相対的に糖含量が低いです。そのため表面の腐敗や全体的な品質保持は、比較的問題になりません。しかし可溶性糖分が足りない場合、 乾物率が低い原料草において、酪酸生成の問題が大きくなります。

圃場で車両に踏みつけられることによる植物へのダメージは、見過ごされがちです。圃場内の不必要な移動は避けましょう。また小型トラクターの使用を検討し、デュアル(ダブル)タイヤ車は避けましょう。

高品質なサイレージを作るのに欠かせない要素として、pHの速やかな低下があります。 一般的にアルファルファサイレージは、緩衝能が高い、あるいは、pHが変化しにくい性質(耐性)があります。緩衝能は、有機化合物、粗蛋白質、カリウム等の陽イオンといった、植物中の成分によって決まります。そのため高品質なサイレージを作るには、研究によって効果の証明されているサイレージ調製材を使うことが重要になります。 各種サイレージ調製材について、詳しくはこちらをご覧ください。

さらに詳しく

アルファルファサイレージ作りについてもっと詳しく知りたい方は、専門家によって書かれたこちらの資料もご覧ください。

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