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寒地型イネ科牧草サイレージ

チモシー、オーチャードグラス、イタリアンライグラスといった寒地型のイネ科牧草は、生産者にとって最も万能な原料草と言えるかもしれません。高品質なイネ科牧草サイレージは、量・質ともに優れた品種を条件の良い圃場で栽培することによって得られます。イネ科牧草のサイレージ発酵の過程は、トウモロコシやアルファルファといった他の作物の場合と変わりません。しかし収穫に関して、いくつかの特徴があります。

サイレージの原料草に用いる牧草品種の選択にあたっては、保存性と放牧への利用の有無(季節毎の利用サイクル)も考慮します。

成熟度

イネ科牧草の収穫に際して考慮すべき2大要素は、収量と品質です。成熟度が進むにつれて、収量は増えますが、質は低下します。通常イネ科牧草は、少なくとも可溶性炭水化物(WSC)を10%含む状態で、穂ばらみ期(出穂前)に収穫するべきです。イネ科牧草の多くは穂が出た後の質の低下が速く、そのため「穂が見えたら、質は終わる」という格言があります。2番草、3番草は、一番草の刈り取り時期や環境にもよりますが、穂を持たないことがあります。そのため、経過日数や成熟度よりも丈を基準にして、30~38 cmの高さになったら刈ることが推奨されます。

収穫面積が広く、さらに全体が同時に収穫適期を迎えるようであれば、穂ばらみ後期よりも早めに収穫を開始することをお奨めします。この場合、収量がわずかに少なくなりますが、原料草としての質は高くなるはずです。また出穂前に刈り取る方が、出穂後に刈るよりも収穫後の2番草の生育がよくなります。

アルファルファとイネ科牧草の混播の場合は、アルファルファの成熟度に合わせた圃場管理を行います。草生面積の50%以上がイネ科牧草の場合のみ、アルファルファとイネ科牧草の混播の収穫時期をイネ科牧草の成熟度に合わせます。

成熟に伴う、乾物量と蛋白質、エネルギー価の変化(イタリアンライグラス)

※UFL:フランス国立農業研究所による、泌乳のための粗飼料単位, 1 UFL= 1 700kcal

 

乾物率

イネ科牧草は、刈り取り直後からすぐに糖分を失い始めます。この糖は、サイレージ発酵を行う細菌にとって大切な栄養源です。高品質なイネ科牧草サイレージを作るには、サイレージ調製に適した乾物(DM)率にまで、出来るだけ素早く原料草を乾燥させることが重要です。

 収穫ステージ乾物率
バンカー/スタック出穂初期28-35%
ラップベール出穂初期45-55%

一方で乾き過ぎのイネ科牧草をサイレージにする場合、適切な密度まで踏圧を行うことが難しくなります。この場合、空気が進入してカビが生える危険性が増し、好気的不安定性が高まります。結果として、動物が利用できるたんぱく質量が減少してしまう恐れがあります。

サイレージ調製前の予乾は、適切な乾物率にすることが重要です。

刈り取りの高さ

イネ科牧草は、再生に必要な養分を根ではなく茎の下部に蓄えています。そのため推奨される刈り取り高さは、アルファルファよりも若干高く9~10 cmになります。加えて高めの位置で刈った方が、土の混入による汚染が起こりにくくなります。

切断長

乾物率が30%を超える場合は、1.5 cm以下の長さに刻んで下さい。この場合、空気が入らないよう気をつけて圧密・密封する必要があります。また繊維の物理的有効性が十分になるよう、飼料設計を行ってください。乾物率が30%未満の場合は、空気の進入リスクは相対的に低く、もっと長く(2~5 cm)刻んでも大丈夫です。

刈り取り

列幅を広くしたウィンドロウで刈り取った草を干すことが出来れば、乾燥はずっと速くなり、植物中の糖があまり失われずに済みます。通常イネ科牧草類はトウモロコシに比べて糖分が少なく、その糖分を失わないようにすることが重要です。

晴天の午前中の後、午後にイネ科牧草を刈り取ると、草に含まれる糖の量は多くなります。しかしこの草を夜通しウィンドロウにして出しておいたのでは、多くの糖分が失われてしまいます。最も良い方法は、1日のうちに刈り取りと収穫を行うことです。最適な予乾時間は、品種と天候によって変わります。

課題

土または灰分による汚染は、イネ科牧草サイレージによく起こりがちな問題です。灰分が過剰に含まれる場合、発酵が阻害されサイレージが腐敗する危険性が、高くなります。以下の点に気をつけ、イネ科牧草サイレージの灰分を乾物の10%未満に抑えるようにして下さい。

  • 倒伏した原料草を収穫しない。 倒伏した原料草を収穫する場合は、倒れた方向の逆側から収穫する。
  • 収穫を早める。
  • 収穫機(ハーベスター)のカッターバーの高さを上げる。 刈り取りの高さを下げると収量は増えるが、土の混入リスクが高まる。原料草に混ざる灰分が増える可能性が高い。
  • 収穫機(ハーベスター)の刃は、フラットナイフを使う。 カーブナイフはより優れた集草能力を有しているが、同時に土を地表から草に混入させてしまう。
  • 予乾のために原料草をまとめたウィンドロウを、直接地面に触れさせない。 草が地面に直接触れないよう、刈り取り跡の上に乗せる。
  • 集草機(レーキ)の爪(タイン)を地面に触れさせない。
  • 草を水平方向にはなるべく動かさない。 3つの集草列をまとめる時は、3つともを動かして一ヶ所にまとめるのではなく、左右の列を中央の列の上に重ねるようにする。
  • 集草とウインドロウ作りを行う機械(ウィンドロウマージャー)を使う。 マージャーを使うことによって、草を地面の上で転がさずにそのまま水平に移動させることができる。
  • サイロの床は、コンクリートまたはアスファルトにする。 開封後の取り出し時に、土の付着を最小限に抑えられる。

トウモロコシサイレージと比べてイネ科牧草サイレージは、相対的に糖含量が低いため、表面の腐敗は比較的問題にはなりません。しかし乾物率が低い原料草を夜通し圃場に出したままにすると、酪酸発酵の問題が起き易くなります。

圃場で車両に踏みつけられることによる、植物へのダメージは見過ごされがちです。圃場内の不要な移動は避けましょう。また小型トラクターの使用を検討し、デュアル(ダブル)タイヤ車は避けましょう。

高品質なサイレージを作る上で、pHの速やかな低下は欠かせません。一般的にイネ科牧草サイレージは、緩衝能が高い、つまり、pHが変化しにくい性質(抵抗性)を有しています。この抵抗性は、有機化合物、可溶性糖類、粗蛋白質、カリウム等の陽イオンといった、植物中の成分によって決まります。そのため高品質なサイレージを作るには、特に乾物率が低い原料草を使用しなければならない場合、研究によって効果の証明されているサイレージ調製材を使うことが重要になります各種サイレージ調製材については、こちらをご覧下さい

植物に含まれる糖は、サイレージ発酵を進める微生物にとっても、腐敗を招く微生物にとっても、格好の栄養源です。そのため糖分の高い品種のイネ科牧草を用いる場合、品種の特長を最大限に生かすには、最適なサイレージ調製と取り出し管理が必要です。糖分の高さは、サイレージ中の乳酸含量の増加と、残留糖分(栄養価)の高さに直結します。しかしサイレージを正しく管理しなければ、これらはどちらも、好気的不安定性を増やす原因にもなります。過去に発熱が起きたことがある場合は、ラクトバチルス ブーケンライラクトバチルス ヒルガルディを含有する、サイレージ調製材を使用することをお勧めしています。

さらに詳しく

イネ科牧草サイレージの調製についてもっと詳しく知りたい方は、専門家によって書かれたこちらの資料もご覧ください。

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