サイレージ調製後の過度の乾物(DM)量の損失を防止することは、次の2点を確保する上で大変重要です。
- 利用可能な粗飼料の量
- サイレージの質
乾物量が失われると、サイレージは「一回り小さく」なってしまいます。サイレージが一回り小さくなると、利用可能なサイレージの量が減ります。しかも乾物ロスで失われるのは、糖類、デンプン、可溶性蛋白質といった中でも貴重な栄養です。その結果、相対的に価値の低い栄養素(繊維や灰分等)が多く残ることになります。
乾物ロスを最小限に抑えることが出来れば、生産者にとってはかなりの経費の節約になります。しかし乾物ロスの防止は、簡単ではありません。500頭規模の酪農家*の場合、損失量を10%抑えると、米国では年間約385万円(35,000米ドル)の節約になると言われています。特に収量が減少する干ばつの時には、圃場での収穫から飼料として家畜に給与するに至るまで、限られた粗飼料の量を最大限に維持することが重要になります。
乾物ロスのリスク
乾物量の損失が起きる主な原因は、次の2つが挙げられます、
- サイレージ発酵の初期段階における、発酵過剰による損失
- 酸素の進入によって起こる、好気的変敗による損失
乾物ロスの予防
サイレージ発酵の初期段階における損失を減らすには、空気への曝露を最小限にするよう、あらゆる努力を払わなくてはいけません。
- サイロへの原料草の投入を、迅速に行う
- 踏圧を迅速に、かつ適切な密度まで行う
- カバー掛けと密閉を迅速に行う
- 研究によって効果の証明されている、サイレージ調製材を使う
サイロ開封後の取り出しに伴ってサイレージに空気が入ると、変敗を招く細菌や酵母、カビが増殖します。好気的変敗による損失を減らすには、これらの微生物の増殖を、抑制又は遅らせることが、鍵となります。
これらの微生物が増殖すると、サイレージの発熱が起こります。対策として、適切なサイレージ調製材を使用することが出来ます。
サイロ開封後の取り出し時に、サイレージの表面が一度空気に触れると、乾物ロスが起こり得ます。 取り出し面の管理を適切に行い、乾物ロスを抑制しましょう。
* 500頭の乳牛が1日あたり乾物9 kg、年間3,650トンのサイレージを摂取し、サイレージの価格は乾物ベースで1トンあたり110ドルとした場合。(1ドル=110円にて、レートを換算しています。)