衛生的なサイレージ2: 牛が必要とし食べたがるサイレージを作る

Renato Schmidt for Progressive Dairyman

腐ったサイレージを捨てるのは、愉快なことではありません。追加の飼料費や労働力も必要になります。質の悪いサイレージの給与は、飼料の栄養価の低下につながるだけではありません。さらに悪い場合には含まれる好ましくない微生物によって、牛群の健康と生産性に負の影響を与えることがあります。

適切に収穫されサイロ詰めされた作物であっても、好ましくない微生物の活性や発酵の悪影響を受けることがあります。サイレージ発酵が良好に見えたとしても、サイロ開封後に発熱やカビの発生が生じることもあります。良好発酵したサイレージがサイロ開封後に二次発酵するのは、サイロ内の微生物バランスによるものです。

 

好ましくない発酵を引き起こす微生物を減らすためには、次の4つのアプローチによって適切に調製することがとても重要です。:

  1. 飼料作物を適切な成熟度、水分率、切断長で収穫します。
  2. 科学的な裏付けのある乳酸菌配合のサイレージ調製材を、目的に合わせて添加します。
  3. サイロに詰めた作物に踏圧を掛け、サイレージ発酵の大敵である酸素を排除します。
  4. さらなる酸素に曝される機会を減らすために、カバーを掛けて密封します。

 

サイレージ作りの目的は、収穫時にその作物が持つ品質と栄養素を保存することです。そのためにはまず、高品質な原料作物を用意しましょう。

 

pHの降下 (素早く)

先に示した4つのアプローチは、粗飼料中の残存酸素を消費し、pHを降下させる発酵を促すことを目的としています。安定した高品質のサイレージを維持するためには、pH を低くする必要があります。酸素のない低pHの環境は、原料作物がしっかりと「漬物になる」環境を作り出し、クロストリジウム属細菌や、酵母、カビなどの変敗を引き起こす微生物の増殖を防ぐのに役立ちます。 pHの降下が遅れると、原料作物の呼吸と酵素の活性時間が伸びるとともに、好気性微生物が増殖と発熱を続けることにより貴重な栄養素が分解されます (表 1)。

 

表 1. ホールクロップコーンの密封の遅延が、真菌数と可溶性糖類量に及ぼす影響 

0時間12時間24時間
酵母 (CFU/g)398,1073,981,07229,512,092
カビ (CFU/g)301,9956,025,59669,183,097
糖類 (乾物% )3.71.90.6

 

可溶性糖類量が限られ乾物率が低い原料作物は、クロストリジウム属細菌が増殖しやすい環境です。クロストリジウム属の特定の種は、酪酸や毒性のある生体アミンを産生し、それを食べると顕著な健康と繁殖問題が起きることがあります。クロストリジウム属細菌の増殖は、研究の裏付けがある乳酸菌で原料作物を処理することで抑制を促すことができます。さらに繊維分解酵素を添加することによって、好ましい乳酸発酵にひつようとなる糖を引き出すことができます。

 

なぜサイレージ調製材が必要なのか?

サイレージ発酵をを原料作物に付着している微生物だけに頼るのはリスクがあります。pHの降下が遅れることによって発酵が安定するまでの期間が長引き、栄養素や乾物量が失われるのが関の山です。

 

サイレージ調製材の添加は保険に分類されることもありますが、費用対効果に非常に優れています。例えば ある乳酸菌株は、サイレージの乾物量と栄養素を最大限保持することが科学的に証明されており、常により良い発酵のサイレージを作ることができます! また開封後の好気的安定性を高め、発熱の無い高品質で嗜好性の良いサイレージ作りに役立つ乳酸菌株も存在します。最適でない条件で収穫した原料作物をサイレージ化する場合などには、それらの乳酸菌を組み合わせることが必要になることもあります。

 

踏圧、踏圧、踏圧(脱気)

原料作物がサイロに搬入された後は、 活発な発酵が起きる前に酸素を排除する必要があります。良質なサイレージを作る際、原料作物に十分な踏圧を掛けることは、最も見落とされている最も重要な要因の1つです。原料作物をよく踏圧して嫌気環境を作ることで、より素早く嫌気発酵が始まり、乾物量の損失を抑えることができます。 推奨される最小の詰込み密度は、乾物量で240 kg /m3 です。

 

カバーと密封

できるだけ早く、サイロに適切にカバーを掛けて密閉することも必要不可欠です。適切にカバーされなかった場合、空気への暴露や栄養素への影響よって、保管中の損失が大きくなることがあります。カバーされなかった場合、上部10インチ(25.4 cm)において乾物量が80%近く失われることが報告されています。 さらにその “変質部分” には、好ましくない微生物や代謝産物がたくさん存在し、動物の乾物摂取量や生産成績、健康に悪影響を及ぼすと予想されます。

 

サイロ開封後の酸素への暴露の減少

サイロが開封後に削り取られたサイレージは、再び空気に曝されます。酸素は、乳酸を食べて変敗を起こす酵母を目覚めさせ、急速に増殖させます。これらの微生物は、サイレージ中の重要な栄養素を利用するとともに、発熱を起こします。 過度の熱はサイレージ中のタンパク質やその他の栄養素を変性させる可能性があります。酸素への暴露は、サイレージ中のカビにとっても、増殖しカビ毒を産生する機会となります。

 

この段階において損失を減らすための一般的な管理方法は、次のとおりです。:

  • サイロの切り出し面をきれいに、清潔にする
  • サイレージを必要以上に削り取らず、また削ったサイレージを山にして放置しない
  • 毎日、適切な量をサイロから削り取る
  • サイレージカッターなどの機械を使って、サイロの切り出し面をきれいにする

 

ほとんどの場合、 サイレージ開封後の好気的変敗と発熱は、変敗性の酵母の増殖によって引き起こされます。そのためサイレージ調製材の利用などの、今までに紹介した素早く効率的なサイレージ発酵を促すためのアプローチが二次発酵の予防にも有効です。さらに酵母による変敗は、飼料の消化性と飼料摂取量を減少させることが示されています (表 2)。

 

表 2. 酵母による変敗が、TMRの好気的安定性と未経産の乳牛の飼料摂取量に及ぼす影響

新鮮なサイレージカビの生えたサイレージ
酵母, CFU/g110,00066,000,000
pH4.165.17
乾物摂取量, ポンド/日11.6910.54

 

カビの増殖を見つける

多くの場合、変敗の原因となる酵母は、サイレージ内に残っている糖類と乳酸を利用して増殖します。その結果、乳酸が消費され、pHが上昇します。すると、カビやその他の日和見微生物(バチルス属、リステリア属、腸内細菌科菌群など)が出現し始めます。カビの発生を目視で確認できる頃には、好気的変敗(二次発酵)がかなり進行しており、すでに大きな損失が発生しています。

 

カビは空気(酸素)が存在するホットスポットで繁殖する傾向にあります。これは通常、密閉性の低いサイロの表層部、サイロの角や肩部分、または空気ポケットがある場所や踏圧が不十分な場所です。

 

 

カビの増殖は嗜好性に問題を引き起こし、家畜のパフォーマンスを低下させることがあります。さらに、一部のカビは特定の条件下でカビ毒を生成することがあります。「カビ毒」とは、いくつかの真菌(カビ)によってごく自然に生成される、毒性問題に関連がある副次的な代謝産物の総称です。カビ毒は、圃場で生育している作物に特定のストレス要因によって生成されることもあります。フザリウム属やペニシリウム属の菌種のように、圃場に由来し、後にカビ毒を作り出す可能性があるカビも存在します。

 

しかしながらカビ毒は、作物の栽培から家畜への給餌に至るまで、生産のすべての段階で生成される可能性があります。Aspergillus flavusは、貯蔵中にカビ毒を産生することがあります。

サイロ開封後に発熱しpHの高いサイレージは、内部の微生物だけでなく、外部からの汚染も受けやすいものです。サイレージを含めた牛の飼料は、糞便に汚染されると大腸菌やサルモネラ属細菌を伝播し、増殖させてしまうことが分かっています。フロリダ大学の研究者らは、サイロ開封後のコーンサイレージに大腸菌 (E. coli O157:H7)を接種し、糞汚染を模倣する試験を行いました。その結果、サイレージ調製時にラクトバチルス ブーケンライ 40788 を添加していたコーンサイレージは、サイロ開封後の大腸菌を接種しても低い pH を維持し、大腸菌は検出されませんでした。しかしサイレージ調製材を添加していないコーンサイレージでは、開封後に大腸菌を接種すると pH が上昇し、大腸菌が増殖していました(図 1)。

 

図 1.  空気に7日間曝したサイレージのpHと大腸菌数 (log CFU/g) 

衛生的なサイレージは、食いも良い

衛生的で清潔なサイレージ管理によって、給与できる餌の量が増えるだけでなく、その栄養価と嗜好性をも高く保つことができます。

 

 

この文章は、ラレマンドアニマルニュートリションのRenato Schmidt とJohn Brouilletteがprogressive dairymanに投稿した資料を元にしています。

 

 

 

 

 

ラレマンドアニマルニュートリションは、このガイドにおいて並びにその他のいかなる出版物においても、安全最低基準又は法的基準を指定したり、農場での又は農場周辺での作業・労働に伴うすべての要遵守事項、危険、安全上の問題への対策を示したりする意図はありません。本ガイドは、出発点となる情報を提供しようとしたものに過ぎず、すべての遵守事項、安全情報、警告情報を含んでいると解釈されるべきでなく、また、ラレマンドアニマルニュートリションの方針を代弁するものだと解釈されるべきでもありません。ここに記した情報及びガイドラインの正確性又は十分性に関しラレマンドアニマルニュートリションは一切の担保・保証・代理をせず、また、これに関わる責任・義務は一切負いません。本ガイドの使用者が自らの責任で、関係地域、州、連邦政府の法律・規制・安全基準を確認し遵守して下さい。

コメントを送る