播種の遅延の影響は、それが作業的な面なのかまたは経済的な面なのかにかかわらず、あらゆる面で問題を引き起こす可能性があります。しかしそれがあまりよく認知されていないのは、作られたサイレージの質は別のもっと大きな要因によるものであると考えられてしまっているからです。 しかし幸いな事に播種が遅延した場合でも、エサに利用できるサイレージの質と量を最大にするために、収穫とサイレージ調整の工程において調節する事ができます。
「2019年の北米は多くの地域で遅くまで雪が降りその後雨が続いたため、例年どおりにトウモロコシを植えることは出来ませんでした。 播種計画の変更に伴い、通常のサイレージの製造計画も変更せざるを得ませんでした。」とラレマンドアニマルニュートリションのサイレージテクニカルサービス、レナト・シュミット博士は説明しています。 「収穫時にしっかりと準備ができていれば、最終的に家畜に与えるサイレージを高品質で安定したものにする事が出来ます。」
シュミット博士は、この年播種が遅くなったトウモロコシを原料に作ったサイレージについて3つ注意すべき点を挙げました。
- トウモロコシの成熟度の変動性(ばらつき)
- 圃場でのカビの増加
- クロストリジウム属細菌による酪酸発酵のリスクの高さ
多様な原料草への対応
遅い時期に播種する事は成長度単位(GDU)の低下を意味します。 多くの場合この懸念を払拭することができる、改良された品種に変えて植えられます。しかし圃場によって異なった種類のトウモロコシを植えると言う事は、収穫時の水分含量にも違いが出てきてサイロ詰めする原料(トウモロコシ)にもばらつきが生じる事になります。
成長度単位(GDU)は、成熟度を予測する尺度です。 GDUは気温の蓄積に基づいて、園芸家、庭師、および農家が、花が咲く日、昆虫が休眠状態から出る時期、または作物が成熟する時期などの植物および動物の成熟率を予測するために使用されます。 ウィキペディア(英語)
「飼料の品質に影響を与える最も重要な要素は、作物の成熟度です」と彼は言います。 「成熟度が様々なトウモロコシを原料にすると、出来上がったサイレージの質も同様にばらつく事になります。サイレージ作りに重要な初期発酵において大きな影響を与えるからです。」
播種が遅くなって成熟度の低いトウモロコシを収穫する事は、排汁が過度に流出するリスクを高める可能性がある、とシュミット博士は言います。 排汁は好ましくありません。乾物量が失われるだけでなく、サイレージの栄養価が失われるからです。刈取りを開始した最初の方のトウモロコシは通常、最も水分含量が高くなっています。 それらはサイロの下部に配置されることになり、その上にどんどん被せられる刻んだトウモロコシの重量が排汁を多くすることになるのです。
そこで様々な研究で実証された信頼のおけるサイレージ調製材を使い、迅速で効率的な発酵を促すことをお勧めします。ペディオコッカス ペントサセウス 12455などの乳酸菌(LAB)は、すばやくpHを降下させます。 pHをすばやく下げることによってタンパク分解細菌の増殖を抑制し、最も消化率の高い栄養素の損失を減らすことができます。
カビの対策
多湿な季節は、カビやカビ毒が増えやすくなります。 特に害虫が多い圃場では注意が必要です。害虫、病気、または天候などによるトウモロコシへの物理的な傷は、カビの蔓延を引き起こし、カビ毒生産の可能性があります。
サイレージに目に見えるカビがなくても多くの場合カビ毒が存在する可能性があり、予期せぬ生産性の低下、牛群全体の健康被害、繁殖成績の低下を引き起こします。
サイレージのカビの発生を最小限に抑えカビ毒汚染のリスクを減らすために、ラクトバチルス ブーケンライ NCIMB 40788を含む実績のあるサイレージ調製材を使う必要があります。
クロストリジウム属細菌による、酪酸発酵を抑える
播種が遅れると、水分含量の高いトウモロコシを収穫する事になり、クロストリジウム属細菌による酪酸発酵のリスクが高まります。 乾物(DM)が30%未満で収穫された原料(グラス、トウモロコシなど)は、クロストリジウム属細菌の汚染リスクがあります。 クロストリジウム属細菌は自然に存在する土壌細菌ですが、原料を収穫する時期が早いほど、つまり水分含量が多いほど、多くのクロストリジウム属細菌が原料に存在することになります。 サイロの中でクロストリジウム属細菌が増殖すると酪酸やさまざまな生体アミンを生成し、糞便臭や腐った臭いを発します。 こういったサイレージを給与すると嗜好性が悪く乾物摂取量が激減します。
原料をサイロに正しい密度で詰め、適切なカバーを使用して迅速かつ効率的に密封し、信頼のおけるサイレージ調製材を使用しサイレージの初期発酵を迅速に行うことによって、極力クロストリジウム属細菌の増殖を抑える事ができます。