サイレージは乳牛の飼料構成のうちで最大50%を占めるため、高品質なサイレージを作ることが大切です。栄養価の高いサイレージは飼料コストの削減につながるとともに、好気的安定性に優れたサイレージは飼料の在庫管理の利便性を高めます。
出来る限り高品質のサイレージを作るためには、サイレージの製法、管理、サイロの設計(構造)の十分な計画が必要です。 不適切な製法、管理では変敗が起こり、コーンサイレージは毎年相当量が廃棄され乾物の損失に繋がっています。この廃棄されるサイレージの大部分は、サイロの気密、踏圧不足による好気的変敗によるものです。サイロの圧縮が不十分なためです。 サイロの密度はサイレージ製造のとても重要な点であり、コーンサイレージの推奨密度は240 kg DM / m3とされています(Bolsen、2010年)。
フランス、イタリア、ギリシャにおける149戸の農場のサイレージを分析したところ、64%のバンカーサイロで密度が推奨値を下回っていました1。 さらに、全サイロの60%で発熱の兆候と好気的変敗が確認されました。
図1:140戸の農場のバンカーサイロの密度(kg DM/ m3)
コーンサイレージの推奨密度である240 kg DM /m3を達成する手助けとなる、いくつかの手順をご紹介いたします。
バンカーおよびスタックサイロにおける踏圧の改善 (密度)
- 刈り取った原料草(コーン)を圃場からサイロに運ぶ速度(頻度)を遅くすると、サイロ上で踏圧をかける時間を長くすることがます。
- 十分な踏圧をかけるために、原料草(コーン)は山積みにせず、サイロに水平に重ねていきます
- 重ねる各層を薄くします(15 cm以下)。こうすることにより重機で踏圧を掛ける際、同じ密度に達するために必要な往復運転回数を少なくする事が出来ます。
- 可能ならば複数のトラクターを使用して、トラクターが各層の間を行き来する時間を増やします。
- 可能であればトラクターの重量を増やし(重しなどを乗せる)、幅の狭いタイヤを使用してサイロへの踏圧重量を高めます。
- バンカーサイロの壁面より上には原料を詰めないでください。壁面より上に積まれた原料へ踏圧を掛けることは極めて困難で、作業場の危険性も伴います。
- バンカーサイロの壁面近くは特に注意が必要です。踏圧が最も掛けにくく、圧密しにくい部分です。
- バンカーサイロに原料草を入れる際、正面から見てをU字型に詰めると、壁面付近への踏圧は掛けやすくなります。スタックサイロを作る場合、奥行きの長さと高さの比率を3対1にする必要があり、そうすることによって側面に十分な踏圧を掛けることが出来、作業上の安全性も保たれます。
- サイロに原料を詰めた後、カバーをしないで一晩放置するようなことは絶対にしないでください。サイロに詰めた原料に空気が戻り、踏圧が甘くなります。サイロに詰込みが終了したらすぐに良質のシートまたは酸素バリア性のあるビニールシートで覆いを掛けます。
参考文献:
- Andrieu & Demey, XVII International Silage Conference, July 1-3, 2015, Piracicaba, Sao Paulo, Brazil