サイレージの粗飼料分析結果の読み方

サイレージの粗飼料分析の結果は、動物の生産性をより高めるための指標を与えてくれるとても大事なものです。

高品質のサイレージを作ることは、動物の生産性を高めるだけでなく、農場全体の経営コストの節約にもつながります。 サイレージの粗飼料分析は、様々な分析機関において近赤外線分光法(NIR)や湿式化学などの方法で行われます。得られる結果は、生産者の目的に合った正しい飼料構成を設計をする上で役立ちます。どのような分析方法によって得られた結果であっても、その内容を正しく理解し把握する必要があります。

乾物率(DM)

乾物率(DM)は、サイレージ検体中に含まれる水以外の成分の比率です。 DMは、サイレージの原料草の品種や収穫時期に依存します。 牧草サイレージでは通常DM25〜35%、トウモロコシ/コーンサイレージはDM30〜40%、ホールクロップサイレージはDM35〜45%であるのが一般的です。

水分率の高い原料草、中でも可溶性糖類が低い牧草は、サイレージの発酵が難しいことがあります。 また水分率の多い原料草ほど、土などの混入汚染が発生しやすく、サイレージの発酵過程に悪影響を及ぼします。

逆に乾物率の高い原料草は、一般に、サイロへの詰込み、踏圧、密閉などが難しくなります。サイレージ中への空気の入り込みはサイレージの発熱につながり、カビや酵母による変敗の危険性が高まり、廃棄サイレージが増えてしまいます。

pH 

pHは、サイレージの酸性度またはアルカリ性度を1〜14の範囲で表したものです。 原料をより良い状態で保存するためには、pH 4.5未満の低い値が必要です。pH4.5未満の酸性度であれば、原料が持つ元の飼料価値(栄養分)をできるだけ多く保持する事ができます。 コーンコブや穀類などの特別なサイレージを除いて、pH値が5.0を超えるサイレージは発酵が不十分で、品質が良くなかったり好気的変敗を起こしやすくなります。

可消化有機物含量

サイレージ乾物中に含まれる可消化有機物含量のことで、%で表されます。数値はサイレージの原料草の種類によって実に様々です。原料となる作物が成熟するにつれ消化率は低下する傾向があるため、高エネルギーサイレージを作る場合には、消化率が最高の時点で作物を収穫する必要があります。

代謝エネルギー(ME)

代謝エネルギー(ME)は、給与されたサイレージから動物が得ることができる総エネルギー量であり、とても重要な数値です。可消化有機物含量を基に算出しMJ/乾物kgで表記されます。この数値が高い程、サイレージに多くのエネルギーが含まれていることになります。

中性デタージェント繊維 (NDF)

中性デタージェント繊維(NDF)は、サイレージ中のヘミセルロース、セルロース、リグニンなどの繊維の含量を%で表したものです。NDFは家畜の乾物摂取量と大きな関係があると同時に、ルーメン機能維持ために必要となるものです。しかし量が多すぎてはいけません。作物の成熟が進むにつれてNDFの消化率は低下し、またルーメン中に滞留する繊維量が増えるにつれてNDFの多い飼料の飼料摂取量は低下します。

粗タンパク質 (CP)

粗タンパク質は、サイレージ中の総タンパク質含量を表します。 名前の通り粗タンパク質では、原料植物由来のタンパク質と窒素肥料などからくるタンパク質の区別はしていません。粗タンパク質含量が多いほど原料植物の持つ緩衝力は強くなり、サイレージに必要な発酵が起こりにくくなります。

アンモニア態窒素 (NH3)N

アンモニア態窒素は、サイレージの発酵過程においてサイレージ中のタンパク質がアンモニアに分解された量を表す数値です。この値が低いサイレージは、保存が良好で、タンパク質がアンモニアに分解されずに保持されていたことを示します。 全窒素含量中のアンモニア態窒素含量が、イネ科牧草で12%以上、トウモロコシ/コーンサイレージで7%以上、マメ科牧草で15%以上の高い値のサイレージは、発酵が不十分であり、タンパク質がアンモニアに分解され、サイレージの飼料価値が低下していることを示します。

乳酸

サイレージ中の乳酸含量は発酵の質を表し、原料作物の種類と刈取り時の乾物量に大きく依存します。

灰分

サイレージの総ミネラル含有量を表します。 灰分は原料作物中のミネラル含有量を表すだけでなく、サイレージの「衛生状態」(サイロ中に入った土の量)の指標にもなります。 灰分の含有量が増えると発酵問題が増加するだけでなく、それに伴う廃棄も増えてしまいます。原則としてサイレージ中の灰分は、乾物あたり10%未満である必要があります。

 

 可溶性糖類 (WSC)

原料草と発酵後のサイレージ中の可溶性糖含量の差は、サイレージ発酵によって利用された可溶性糖含量を意味します(サイレージ発酵による有機酸は、可溶性糖類から作られます)。

でんぷん

トウモロコシ、穀物、その他のデンプン質のサイレージに(一般的に)存在する炭水化物です。 でんぷんは、ルーメンにとって効率の良いエネルギー源です。

 

 

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