5月上旬の刈り取り前の牧草のエネルギー価は、乾物kgあたり約12.5MJ(約3,000kcal)です。しかし出来上がったサイレージを分析すると、平均エネルギー価は乾物kgあたり約11.0MJ(約2,630kcal)となっています。 どこかでかなりの量のエネルギーが失われ、私たちはより高価な購入飼料によって飼料中のエネルギーを補っている事になります。ではなぜ一部の牧草サイレージは、12MJ以上のエネルギーを含んでいるのでしょうか?
刈り取ったばかりの牧草がサイレージになり家畜に与えられるまでに、利用可能なエネルギーの約12%が失われているのが普通ですが、成績優秀な生産者はわずか4%しか失いません。これは牧草から得られる動物の生産量を増やす上で、大きな可能性があることを意味します。
乾物率30%のサイレージ100トン(原物)当たり、僅か0.1MJ(約24kcal)のエネルギーが増加した場合を考えてみます。これはサイレージ100トン(原物)当たり566リットルの乳量増に繋がります。
イギリスの一般的な酪農家は、乾物率30%のグラスサイレージを約1500トン作っています。もし乾物1kgあたり0.5MJ(119kcal)の代謝エネルギーの増加が可能であるとしたら、僅かなコスト負担で42,453リットルの乳量増加が見込まれます。
当社がイギリス全土の酪農家さんを調べた結果、ほんの小さな部分を変える事によってサイレージの質を改善している4つの地域に出会いました。
- 高エネルギーサイレージを作る上で最初に必要な事は、原料となる作物を収穫適期に刈るという事です。作物は収穫適期を過ぎ成長し過ぎると、品質が低下しエネルギーが失われます。エネルギー含有量の主要な決定要因は消化率で、代謝エネルギー価に直接関与します。原料草は週に3単位の消化率を失います。イギリスでは5月15日頃、穂が50%になる時が草の刈り時季だと広く信じられていますが、これは草の品質の50%がすでに失われていることを意味しています。ですのでもっと早めに刈るようにしてください。
- 原料草が収穫適期になったらいつでも刈れるように、ハーベスターの刃を磨いておいてください。本収穫に先立ち原料草の飼料分析をする事は、刈り取りのタイミングを可能な限り正確に予測するのに役立ちます。コントラクターには刈取りの目的をしっかり伝え、それに合った収穫計画を立てます。刈取りが予定通りに進めば酪農家さんたちの日常は多少楽になります。
- 刈取り後の予乾のし過ぎはいけません。特に刈り取ってからサイロに詰められるまでに、長く圃場に放置される草には要注意です。刈り取られてから刻まれるまでに長く圃場に放置することは、エネルギー価を損失する最大の要因の1つです。 刈り取られた作物が地面に置かれている間は常に呼吸をしているため、エネルギーと乾物量が失われます。 長すぎる予乾は、3%を超える乾物量の損失をもたらし、エネルギーを失います。 24時間を超える予乾はしてはいけません。特に天気の良い日は、朝収穫して夕方にはサイロへもって行くようにして、予乾は長くても8時間に留めます。
- 刈り取った作物をテッターで広げる事は予乾の速度を速めることができます。しかし原料草を物理的に動かすと、作物が散らばる事による物理的損失と土壌汚染につながる可能性があります。
- 収穫された作物がサイロに詰められたら、迅速かつ安定した発酵をさせることがエネルギーを保持するための鍵です。急速にpHを低下させることで、好ましくない細菌や酵母、その他の微生物の活動を止めることができます。好ましくない微生物が活動している間はエネルギーが消費され、二酸化炭素が放出されます。つまり出来上がったサイレージの栄養が減り、質の悪い飼料となってしまいます。そのために目的に合ったサイレージ調製材を選び、確実に迅速かつ効率的なサイレージ発酵を行い、より多くのエネルギーを維持し、損失を減らします。
- 次にサイロを完全にしっかりと密閉します。 サイロの中のサイレージが好気的変敗(二次発酵)すると、牛に給餌するためのエネルギーが減少します。 サイロの側面と上面を信頼のおける酸素バリアシートで完全に密封し、酸素(空気)が入らないようにシートにしっかりと重しを乗せてください。この作業には十分な時間を割いてください。 サイロのシート掛けは、約4〜10か月間サイレージの品質を維持する上で、大変大きな役割を果たしています。
サイレージの品質に焦点を当てることで、農場コストをコントロールできます。