近年、降雨の時期、量、頻度が世界規模で大きく変化しています。地域によっては干ばつによる被害が見られる一方、線状降水帯の発生による浸水が発生することもあります。
浸水が植物に付着しているマイクロバイオータ(微生物群集)に及ぼす影響については、研究があまりありません。Cui らは2019年に、灌漑管理下の稲の茎部において、水界面より2 cm上と2 cm下の場合でのマイクロバイオータの構成の違いを調べています1。その結果、水面下の茎ではファーミキューテス門細菌の付着割合が増加し、その中でもバチルス科に属するバチルス属細菌が占める割合が有意に増加しました(下図:水面上16.35% vs. 水面下52.59%)。
この試験ではこの稲を用いたサイレージは調製していません。しかし長期間に渡って浸水した作物を原料としたサイレージでは、バチルス属細菌の割合が増加していることが予測されます (浸水は土壌中の酸素含量を低下させ、芽胞形成微生物の量を増加させることが考えられるため)。バチルス属細菌による発酵は、 サイレージの乾物回収量と消化率の低下につながり、牛の飼料摂取量にも負の影響を与えます。
浸水被害を受けた圃場では収穫車両の運転に物理的な支障があるだけでなく、 良好なサイレージ発酵が困難になります。サイレージの発酵品質を担保するためには専門家のアドバイスを受け、改善策を講じる必要があります。
<参考文献>
- Hui-Ling Cui, Gui-Lan Duan, Hongmei Zhang, Wangda Cheng, Yong-Guan Zhu, Microbiota in non-flooded and flooded rice culms, FEMS Microbiology Ecology, Volume 95, Issue 4, April 2019, fiz036, https://doi.org/10.1093/femsec/fiz036