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用語集

灰分汚染
灰分は、原料草または飼料中に含まれるミネラルの総量を示す。一般的にサイレージ中の灰分は、植物に由来するマグネシウム、カルシウム、カリウム等のミネラルである。土の混入があった場合は、高濃度の鉄、アルミニウム、シリカも灰分として検出される。灰分が高い時には過剰な土の混入が考えられ、サイレージ発酵に負の影響がある。
無水アンモニア
原料草に無水アンモニアで原料草を処理すると、pHが上昇し、全ての微生物活動を抑止する傾向がある。適量を使用すれば、酵母やカビの生育を永続的に抑制する。乳酸菌と腸内細菌科菌群は、最終的に活動を再開し、サイレージは発酵する。しかし発酵は相当に遅れるので、乾物損失量の増大につながると考えられる。アンモニアは有害ガスであるため、取り扱いには注意を要する。  
発酵
原料草を貯蔵設備に詰め込んだ時、初期段階においては酸素がいくらかサイロ中に閉じ込められている。この酸素を用いて微生物は好気発酵を行い、二酸化炭素が生産される(呼吸)。また、植物自体も呼吸を続ける。酸素が全てなくなると、生育に酸素が不可欠である偏性好気性菌の増殖は止まり、植物の呼吸も止まる。次に酸素がなくても生育可能な微生物(偏性嫌気性菌と通性嫌気性菌)増殖を開始し、様々な発酵産物を生む。発酵において酵母は主にアルコール、乳酸菌は乳酸、プロピオン酸菌はプロピオン酸、酢酸菌は酢酸、クロストリジウム属細菌は酪酸を生産する。  
発酵助成材
発酵助成材には、原料草に生来付着している細菌の増加を促す成分(糖、酵素等)や、原料草の特性に合わせた特定の細菌などがある。サイレージ調製用の細菌製材も、発酵助成材あるいは発酵促進材の一種である。サイレージ調製用細菌製材は、他の発酵助成材よりも優れた働きを示す。  
発酵品質の分析
サイレージの品質と発酵状態は、サンプルを採取し、認定された試験所で分析することで知ることが出来る。国際的な飼料分析所として、CVAS、Dairyland、DairyOne、Rock River Labs、BLGG等がある。分析項目は非常に多く、それぞれ追加費用がかかる。何を知りたくて分析を依頼するのか、目的をよく理解し、不必要な項目のために無駄な費用を払わないようにしたい。良質で保存状態の良いサイレージの場合、飼料設計のために飼料の栄養価を知りたいだけならば、飼料分析だけにとどめる。飼料分析では、サイレージの乾物量、pH、繊維およびリグニン含量、デンプン、蛋白質含量(総粗蛋白質、可溶性蛋白質、結合蛋白質を含む)が分かる。その他、正味エネルギー量等の数値の算出も行われる。サイレージの質に不満がある場合は、上記に加えて灰分量を調べてもらう。灰分量から、原料草への土あるいはスラリーの混入の有無が分かる。灰分量から7を引いた残りが、植物自体以外に由来するものである。例えば灰分12%の場合、12 - 7 = 5%が外部由来である。この場合、サイレージの乾物トンあたり50 kgの灰分が、土またはスラリー由来となる。土やスラリーには、クロストリジウム属細菌(土)や腸内細菌科菌群(スラリー)が含まれている。そして必要に応じて発酵品質分析や、変敗が見られる場合には微生物分析も検討します。ラクトバチルス ブーケンライを添加したサイレージの場合には、1,2-プロパンジオールの分析も好ましい。
相対粗飼料評価(RFV)と相対粗飼料品質 (RFQ)
粗飼料の価値を比較検討するための指標であり、日本国外では幅広く使われている。相対粗飼料評価(RFV)は、標準となる粗飼料と比較した時の、可消化乾物摂取量に基づいて評価される。RFVは、粗飼料を販売する際のランク付けや、在庫管理に使われる。農場では、各動物群に適した質の粗飼料を給与したり、収穫時期を決定するためにも用いられている。 RFVの計算に用いられる乾物消化率は、酸性デタージェント繊維(ADF)を基に計算される。つまり粗飼料のADF含有量と乾物消化率との間に、一定の相関関係があるとみなしている。ADF含有量に対する乾物消化率は、実際にはかなりの幅で変動するため、この変動を組み込んだものが相対粗飼料品質(RFQ)である。  
細菌入りのサイレージ調製材
サイレージ内での増殖が速く、優勢となることが期待される生きた細菌を配合した添加物。原料草に添加して用いる。従来の細菌入りのサイレージ調製材には、乳酸の産生量を増やし、pHを素速く低下させ、酢酸と酪酸の産生量を減らすために、ホモ型発酵の乳酸菌(ラクトバチルス プランタルム、ペディオコッカス属等)が配合されている。近年では、好気的安定性を向上することが実証されている細菌(ラクトバチルス ブーケンライや、ラクトバチルス ヒルガルディ等)を配合するサイレージ調製材も存在する。  
緩衝化プロピオン酸
プロピオン酸と塩基を混ぜて、塩を生じさせることで作られる。例えば、プロピオン酸と水酸化アンモニウムと混ぜて、プロピオン酸アンモニウムが作られます。濃縮溶液では非腐食性である。しかし水で希釈されたり、収穫時の作物中で水分が増えると、塩は解離してアンモニウムイオンとプロピオン酸塩イオンとなり、プロピオン酸と同程度に酸性になる。緩衝プロピオン酸は、推奨濃度(作物の原物の重量トンあたり1.8~2.7 kg)で使用する限り好気的変敗の防止に有効となり得る。しかし原料草のサイレージ調製時の一般的酸性化材として使うのには、効果的でない(必要使用量が多すぎ、コスト的に無理がある)。低濃度のプロピオン酸は、一部のカビ毒の生産を促進することがある。  
縮み
乾物ロスによりサイレージの量が見た目でも減ることを、サイレージが「縮む」と表現することがある。  
酢酸
酢に含まれる酸である。酵母やカビの増殖を抑える力が強い。サイレージの発熱と腐敗を防止するためには、ある程度の量がサイレージ中にあることが望ましい。サイレージ中において酢酸は、主にヘテロ型発酵の乳酸菌によって生産される。 酢酸を産生するのは、ホモ型発酵の酢酸菌もしくは一部のヘテロ型発酵の乳酸菌である。ホモ型発酵の酢酸菌は、五炭糖(キシロース等)から酢酸を産生する。ラクトバチルス ブーケンライなどの一部のヘテロ型発酵の乳酸菌は、乳酸を嫌気的に酢酸に効率的に変換する。この菌種の発酵効率は高く、摂取量を減少させる可能性のある化合物は生産されない。 一方で酢酸は、一部のヘテロ型発酵の乳酸菌による速度の遅い非効率な発酵が起きたことを示す指標でもある。酢酸が産生されている場合、摂取量の低下を招くような他の発酵産物が生産され、エネルギー価を損失するような発酵となっている可能性もある(「ホモ型発酵の乳酸菌とヘテロ型発酵の乳酸菌」を参照)。  
酪酸
酪酸は、主に収穫時の原料草に比較的少数存在しているクロストリジウム属細菌の発酵活動によって産生される。原料草に含まれるクロストリジウム属細菌の数は、土の混入があると劇的に増える。土の混入は、刈り取り高さが低すぎる時、牧草の集草や反転攪拌時、土が濡れている時に踏圧トラクターの車輪に付着した土によって起こる。乾物率の低い材料を圧密し過ぎた場合にも増える。土は1グラムあたり100億CFUものクロストリジウム属細菌を含有している場合がある。クロストリジウム属細菌は、酪酸を生産してサイレージに強くしつこい糞便臭を招く。さらに蛋白質を分解して蛋白質を有意に減少させ、生成した生体アミン(ヒスタミン、プトレシン、カダベリン等)によって、動物の健康や生産成績に害を及ぼす。腐敗によっても悪臭を招く。  
酵母とカビ
どちらも真菌の仲間である。一般的に酵母は単細胞生物、カビは多細胞糸状体である。どちらも土中、水中、植物表面に広く生息する。植物の成熟に伴って、あるいは霜・雹・干ばつ等で傷んだ時や、予乾の間に増殖する。遊離糖を利用して増殖するのに加えて、細胞外に酵素を分泌することによって、複雑な植物成分を分解して単純糖を取り出す。そしてこれを栄養にして増殖する。   植物表面に付着している酵母の多くはカロテノイド(橙から赤)色素を含有している。色素により自身をUVから保護しており、そのためサイレージ表面にこれらの色が見られることがある。 酵母は好気環境下で増殖が可能であるとともに、酸素のない嫌気条件下でも増殖できる。嫌気発酵における主な産生物として、エタノールが挙げられる。酵母の嫌気発酵では、その他にもn-プロパノール、イソペンタノール、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸が産生され、少量の乳酸も生産される。 酸素のある好気条件下においては、酵母は糖を完全に酸化し、二酸化炭素と水を産生し、同時に熱を発生させる。多くの酵母は乳酸を利用して増殖することも可能で、その際にも乳酸を完全に酸化し、熱を発生させる。サイレージの発熱のほとんど(>95%)は酵母が原因である。1gのサイレージにつき100,000 CFUを超える酵母が存在する場合は、取り出し時に空気に触れると、そのサイレージはほぼ確実に発熱すると推定される。酵母の増殖は酢酸で抑制することができる。   安定したサイレージは、低pHと嫌気環境下で作られる。このような条件は、カビの増殖には適さない。一般的にカビの発生は、空気への曝露が起きた場所のみで問題となる。例えばバンカーやスタックサイロの上面と側面、サイロに空気が侵入した箇所、圧密不良な場所(局所的にカビたサイレージの塊が発生等)、原料草詰め込み時に外気に曝され続けた面、サイロの取り出し面などである。 サイレージ中の酵母数が多い場合、酸素を利用しやすいサイロ表面に近づくほど、乳酸を利用して酵母が増殖する。酵母の増加はサイレージのpHと温度を上昇させ、続いてカビの増殖が促される。カビは糖と乳酸の両方を完全に酸化し、さらにセルロースとその他細胞壁成分を加水分解して完全に酸化し、乾物ロスとエネルギー価の大幅な損失を招く。加えてサイレージによく見られるカビはカビ毒を生産するものが多く、これは健康や繁殖上の重大な問題を起こし、給与動物の生産成績を著しく低下させる可能性がある。サイレージを動かす時、カビの胞子は空中に浮揚する。これを吸い込んでしまった場合、乳牛にも生産者や牧場関係者にとっても、呼吸器障害の元となる。カビの増殖はプロピオン酸で抑制することができる。  
酸性デタージェント繊維 (ADF)
粗飼料の化学分析項目の一つ。酸性デタージェント溶液に溶けない画分で、セルロースとリグニンが含まれている。サイレージのエネルギー含有量を推定するために用いられる値である。ADFが高くなると、可消化エネルギー量は低下する。