地球温暖化条件下におけるサイレージ調製

Gordon Marley/ラレマンドアニマルニュートリションTechnical Sales Manager

気温上昇は、気候変動に伴う主要な変化として世界的に認知されています。全ての微生物には至適温度があり、ある程度の増殖が可能な温度範囲は決まっています。サイレージ調製時に添加する一般的な細菌には、 それぞれ死滅温度があります。 一度この温度にまで達すると、細菌は生存能を失い、その後のサイレージ発酵に影響を与えることは出来ません。

気候変動問題に取り組む国際的な政府組織からは、様々な気温上昇の予測モデルが報告されています。温室効果ガスの排出シナリオの特別報告書として提出された、主要な予測モデルを表1に示します。これらのモデルでは、採択する国際的な環境政策によって、気温上昇の幅が異なることが示されています。しかし全てにおいて、今後1世紀の間に、地温が華氏36.8~44.6度  (摂氏2.7~7.0度) 上昇することが予想されています。これはサイレージ詰込み時の気温や、詰込み後数日のうちに達するサイレージ温度に、直接影響を与えるでしょう。

表1. 2000 ~ 2100年の間の気温上昇 (°C)

予測モデルの種類全体地温海温
CCSR/NIES4.77.03.8
CCCma4.05.03.6
CSIRO3.84.93.4
Hadley Centre3.75.53.0
GDLF3.34.23.0
MPI-M3.04.62.4
NCAR-PCM2.33.12.0
NCAR-CSM2.22.72.0

 

図2 コーン詰込み後のサイレージ温と外気温の変化

サイロに原料作物を詰め込んでから最初の数日間に、残存している空気は二酸化炭素に変換され、サイレージの温度が上昇します。 サイレージ温度の上昇域は、詰め込んだ原料草の間隙率、乾物率、原料作物に付着している微生物の構成、踏圧手法、 密閉方法によって変わります。 達する最高温度は、外気温にも影響を受けます。 通常のサイレージでは、外温度と比較して華氏50~59度(摂氏10~15度)の上昇が観測されます。図2には、2018年の9月2日にトウモロコシを詰め込み、2019年の2月に開封した時の、チェコでのサイレージ温と外気温のデータを示しています。詰込みから最初の数日で、サイレージの温度は急速に95°F (35°C)に上昇し、ピーク時には 100.4°F (38°C)を示しました。この温度は、一般的なロイコノストック属細菌の 死滅温度を超えています。ロイコノストック属細菌の至適温度は68~86°F (20~30°C)、増殖可能温度は41~86°F (5~30°C)とされています (Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology)。

 

通性嫌気性であるロイコノストック属細菌は、サイロ内が好気環境から嫌気環境に変化する時にサイレージ化を進める典型的な細菌です(図3. Dourin et al., 2019)。先にご紹介したチェコのコーンサイレージでは、詰込み後温度が多くのロイコノストック属細菌種の死滅温度を超え、微生物構成はより熱耐性を持つものが優占となりました。効率の悪い微生物の働きによってサイレージ発酵は遅くなり、乾物の損失量が大きくなりました。完成したサイレージは、動物体内での消化率が低く、乳量も激減しました。地球温暖化は、正常なサイレージ発酵微生物の活動に大きな影響を与えるため、サイレージの乾物量の保持が難しくなります。

高温は、植物中の繊維/リグニンの蓄積量を増加させます。トウモロコシにおいて、成長期の気温が華氏84.2度(摂氏29度)を超えた時、収量は低下したことが報告されています(Schlenker and Roberts)。 そのような状況であっても、トウモロコシの刈り取り位置を下げることによって収量を多くすることは可能です。しかし刈り取りの高さを下げることはサイレージ原料中の繊維含量を増やし、サイロ中の原料に間隙が生まれてより多く空気が含まれてしまうため、圧縮が難しくなります。結果として高温下で作成されたサイレージでは、良質サイレージを作るために必要な細菌の活性と効率が不十分になります。これは、サイレージの乾物ロスを増やし、消化率と飼料価値を低下させます。

実験室内での試験であれば、乳酸菌は様々な異なる温度下でも増殖します。しかし研究室外の実条件では、競合となる微生物、気温の変化、pH、[O2/CO2], awなどのストレス要因に曝されるため、より温度への感受性が高くなります。

図4

サイレージ調製材に配合される最も一般的な乳酸菌種であるラクチプランチバチルス プランタルムを用いて、僅かな温度変化の影響を調べたデータをご紹介いたします(図4)。最適培地を用いて、培養温度を華氏104度から113度(摂氏40度から45度)に上げると、増殖速度は5.7分の1に減少しました。

微生物とそれらによるサイレージ発酵は、地球温暖化の影響を受けます。その影響は地域的または世界的に広がるとともに、頻度も増加しています。気候変動が農業のあらゆる側面にもたらす問題を認識することは、農家の収益性にとって極めて重要です。飼料不足の状況下において貯蔵期間を短縮してサイロを開封する必要に迫られたり、より良質なサイレージを作るとともに開封後の質の安定性を高める必要がありますが、このような需要に業界が対応していくことが求められます。

サイレージ調製材に含まれる細菌の至適温度は様々です。原料作物をサイロに詰めた後の温度が華氏86度(摂氏30度)を超える場合、細菌の代謝活性が保たれて望ましい発酵を行えているかを確認することをお勧めします。

 

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