サイレージ用デントコーンの栽培と調製

Gordon Marley/ラレマンドアニマルニュートリションTechnical Sales Manager

デントコーンは、サイレージや配合飼料用として、世界中で最もよく栽培される作物です。酪農家にとってコーンサイレージの出来映えは、生産性を左右する大きな要素です。 コーンを適切に栽培し、収量とサイレージの品質を最大にするには、 品種の選択や播種床の準備、サイレージ調製に関する知識が必要です。

圃場の準備

植物が早く生長するには、施肥を通じて適切な栄養を供給する必要があります。窒素量は、生育に重要となる成分です。しかし植物は、施肥からの窒素と土壌中の無機態窒素の両方を吸収するため、必要な施肥量を正確に推定するのは困難です。もし窒素量が少なすぎた場合、葉の生長が遅れ、期待よりも葉が小さくなります。 その結果光合成量が少なくなり、最終的には期待よりもでんぷんの蓄積量が低くなります。 一方でもし窒素が過剰であった場合、葉が大きくなりすぎ、サイレージ中の穀物と茎の割合が少なくなります。さらに生育中にコーンが倒伏する可能性があるとともに、サイロ発酵初期にガスが発生する危険性があります。 またコーンは根の生長のために、カリウム、マグネシウム、硫黄とともに、リンを必要とします。これらは全て植物が利用できる状態である必要があります。そのため収量を伸ばすためには、施肥を行う時期が重要となります。  微量元素の多くは、家畜ふん堆肥に含まれています。

もし家畜ふん堆肥を用いない場合は

、これらの微量元素について考慮する必要があります。コーンの収量を40トン/ヘクタールと仮定した場合の、肥料の吸収速度は次の通りです。:

  • 窒素(N) = 160 ~210 Kg / ヘクタール
  • リン(五酸化二リンとして) = 55 Kg / ヘクタール
  • カリウム(K)  = 175 Kg / ヘクタール

重要なポイント – コーンの生長と収量のためには、適切なタイミングで適量を施肥することが大切です。

 

施肥は、元肥と追肥に分けて散布するべきです。出穂後の窒素の施肥は、肥料焼けを起こさないように畝の間に行います。出穂後の窒素の施肥は、雨の多い年に高い効果があることが知られています。

コーンの素早い発芽のためには、優れた播種床が必要です。コーンは土壌圧縮の影響を受けやすく、根の発達が大きく変わります。もし耕起箇所に硬盤層がある場合は、できる限りサブソイル(硬盤層を破砕)すると良いでしょう。圃場は播種前に耕起し、8 cmの深さの柔らかい土壌層を作ります。これより深く耕した場合は、保水力を保つために圧縮しない程度に固めておきます。

コーン栽培には、pH5.8~7.0の土壌が必要です。pHが6より低い場合、石灰を撒きます。土壌解析でマグネシウムが不足していた場合は、苦土石灰を使うと良いでしょう。

 

播種

コーンの種子は、5~8 cmの深さに撒きます。播種が浅すぎる場合、根の発達が悪くなります。土壌が乾燥しているほど、種を深く撒いて水の利用性を高めます。播種は地温が8~10 度になってから行います。栽培品種の選択は、地域の条件と種苗会社のアドバイスに沿って行います。品種を比較する場合は、地域に適した異なる品種を用いて、期待収量を評価します。

 

生育ステージ

コーンの生育は、最初はとてもゆっくりですが、その後急激に大きくなります。下表では、イギリスで25年間に渡ってコーンの生育を追跡し、各生育ステージに必要となる日数を算出しました。

生育ステージ 平均時期 標準偏差 (日)
播種 4月29 日 4
発芽 5月12 日 4
絹糸抽出期 7月15日 7
乳熟期 8月13 日 10
糊熟期~黄熟期 8月31 日 12
成熟期 9月19 日 16
収穫期 10月3 日 12

 

栄養成長期の終わりまでには、作物の収量を推定できるようになります。追肥は、植物が最も窒素・リン酸・カリを必要とする時期である、播種から30~45日後の間のどこかで行います。


出典元の図に翻訳を追記
出典元:https://www.smart-fertilizer.com/articles/corn_fertilizer/

 

収穫

コーンの成熟度は、子実のミルクラインを見ることで判定することが出来ます。子実のミルクラインとは、硬いでんぷん質と柔らかい乳汁質の境い目にある線のことです。 慣習的には、ミルクラインが子実の1/2から2/3にの時に収穫を行います。サイレージ用のコーンの収穫適期は、乾物率が34.5%の時と考えられているので、圃場全体の成熟度を評価するとより正確です。もしコーンの収穫が早すぎる(乾物率が34%より低い)場合、飼料価値が大きく低下します。一方で乾物率が40%まで高まっても、失われる飼料価値はわずかです。そのため可能な限り、乾物率が平均35%になった時点(コーンの生育ステージ:R5.5~R6)で収穫を行うのが最適です。そうすることで、圃場全体のコーンのエネルギー含量を最大にすることが出来ます。

 

動物が消化できないリグニン部位や、好ましくない微生物が付着している部位は、コーンの茎の下部にまとまっています。適切な刈り取りの高さは、多くの研究で地面から20~45 cmであると提唱されていますが、一貫した証拠はありません。

 

収穫の際には、最低でも地面から 20 cmより高い位置で刈り取ります。 こうすることで、リグニンを多く含む部分の茎を圃場に残すことが出来、最終的なサイレージの消化率を高く保つことが出来ます。 もし圃場のコーンが倒伏したり土が混入した場合、茎が好ましくない微生物に汚染され、 サイレージの乾物ロスを増やし飼料価値を低下させてしまうでしょう。刈り取りの高さを上げることは、結果としてサイレージの量を増やし質を保つことになります。

標準的なコーンサイレージの場合、乾物率とサイレージの用途に基づいて切断長を決定します。乾物率は、35%程度であることが望まれます。原料となるコーンの切断長は、乾物率が高くなるに伴って短くするべきです。乾物率が35%の場合、チョッパーの切断長の設定値(theoretical chop length :理論切断長)は、9 ~ 12 mmが最適です。全ての子実が確実に破砕されるように、クラッシャーはおよそ 2 mm に設定すると良いでしょう 。1リットルの裁断コーンのうち、破砕されずに残っている子実の粒が、1個より多く残らないようにします。子実の破砕が不十分であった場合、植物中に内在する酵素が子実内に入り込めず、 サイロ貯蔵中のでんぷん消化率の促進が抑制されます。コーンサイレージをバイオガス化する場合には、可能な限りコーンの表面積を大きくするために、2 mm程度にまで極端に短く切断します。子実の破砕状況は、収穫及びサイロ投入時に適宜確認を行い、確実に適切な加工が施されていることを確認します。

重要なポイント – 確実に子実を破砕することを心がけてください。刻んだコーン1Lの中に、未破砕の子実が1個より多くならないようにします。これはコーンの使用用途が、飼料であるかバイオガスであるかに関わらず、重要となります

 

 

 

 

通常コーンサイレージは、物理的有効繊維(PEF) の供給源として扱われる飼料ではありません。しかし切断長を9 mmより短くした場合、物理的有効性は全く期待できなくなることには留意します。切断長が9 mmを下回った場合は、飼料設計に注意が必要です。

コーンサイレージは、サイロ開封後に二次発酵が起こりやすい飼料です(好気的に不安定になりやすい)。二次発酵ではカビと酵母が増殖するため、サイレージの乾物量とエネルギー量、消化率の低下に直接的に悪影響を与えます。カビと酵母は、サイレージ中に好ましくない物質を産生するため 、給与動物の乾物摂取量の低下にもつながります。

 

サイレージ調製

コーンのサイレージ調製において大切なことは、バンカーに均一に広げて、均一に圧縮することです。約20 cmの薄い層を重ね、原料作物の乾物率に合わせた適切な踏圧を行います。

収穫時の原料作物には、乳酸菌、腸内細菌科細菌、酵母やカビなどの自然由来の微生物(土着微生物)が付着しています。これらの微生物の発酵効率と最終産物は様々であり、乳酸菌だけが効率的に原料作物のpHを低下させることが出来ます。適切にpHが低下すると、サイレージの消化率やエネルギー価、嗜好性に悪影響をもたらす、好ましくない微生物の増殖が抑制されます。

バイオガスプラント用のコーンサイレージには、メタンの前駆体となる酢酸を多く産生することに特化したサイレージ調製材を使用することをお勧めします。

原料作物の詰込み後は、可能な限り早くバンカーにシート掛けを行います。バンカー内への空気の侵入を最小限に抑えるために、全て端をしっかりと密封します。最高品質のサイレージを作るためには、酸素バリア機能のあるビニールシートを使うことをお勧めします。

 

保管

収量を得るために必要となるのが窒素ですが、確実に過剰にならない適量で施肥することは困難です。 そのため植物内には、時に窒素が蓄積していることがあります。蓄積部位は茎の下部に集中しています。この窒素は、貯蔵開始初期のpH低下時(サイロ詰込み後2~10日目)において、窒素酸化物に変換される可能性があります。このガスは、サイレージの外に出ようとします。もしガスの発生が確認された場合は、ガスの産生が止まるまで、近寄らないようにします。もしガスが外に排出されないぐらいにバンカーの密封が完璧であった場合、ガスはサイレージに再吸収され、サイレージを変色させることがあります。ガスがサイレージに再吸収されてしまえば危険はなくなり、出来たサイレージを動物に給与しても問題ありません。

重要なポイント – サイロ貯蔵から最初の数日間のうちに、茶色/オレンジ色で漂白剤のような臭いのガスが発見された場合には、そのサイレージに接触しないようにします。管理者にも報告するようにしましょう。

 

給与

サイロからの取り出し管理は、とても重要です。コーンサイレージは栄養価とエネルギー価が高いため、サイロ開封後に発熱やカビの発生が起こりやすいことが知られています。給餌の度にサイロの取り出し面から、一列または表面全体を削り出すことが大切です。 ビニールシートは1~2日間の給餌に必要となる分だけをめくるようにし、 できればバンカー表面を崩さないようにディフェイサーを使うと良いでしょう。

 

 

 

 

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